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地位財と非地位財|「足るを知る者は富む」生き方のすすめ

目次
地位財と非地位財とは?
なぜ人は地位財を求めるのか
非地位財に目を向けると人生が変わる
私の実体験:地位財を追っていた頃と今
FIREやミニマリズムに通じる考え方
幸せは「比較」ではなく「自分の基準」で測る
まとめ:足るを知る者は富む
本文
地位財と非地位財とは?

「地位財(Positional Goods)」とは、他人と比較して価値が決まるモノや経験のことです。たとえば、高級車、ブランドバッグ、最新のiPhone、高層マンション、フォロワー数の多いSNSアカウントなどが挙げられます。どれも単体で機能や快適さがあるかもしれませんが、本質的には「他人より優れているかどうか」がその価値を左右しています。

一方、「非地位財(Non-positional Goods)」とは、比較の対象にならず、自分自身の満足に直結するモノや時間のこと。たとえば、健康、自然とのふれあい、静かな時間、深い人間関係、自己成長などが該当します。他人と比べる必要がなく、持っているだけで自分の心を満たしてくれる財産です。

この2つの違いを知ることは、人生において「何を求め、何を手放すか」を考える大きなヒントになります。特に、FIREやミニマリズムを志向する人にとっては、避けては通れない概念といえるでしょう。

なぜ人は地位財を求めるのか

人間には本能として「社会的比較」の習性があります。これは、原始時代から続く「群れの中での地位」に関する心理です。地位が高ければ、より良い食料、パートナー、安全な場所を得られた。そのため「他人より上でありたい」「目立ちたい」といった欲求は、進化の過程で染みついているともいわれます。

この本能は現代社会でも変わっていません。むしろSNSによってさらに増幅されています。たとえばInstagramで旅行やブランド品の投稿を見るたびに、自分と他人を比較し、「負けたくない」「私も手に入れなきゃ」と思ってしまう。その結果、地位財を追い求めるライフスタイルに飲み込まれていくのです。

でも本当にそれで満たされるでしょうか? たしかに新しいモノを手に入れた瞬間は高揚感があります。でもその感覚は長くは続かず、やがて「もっと良いものを」「あの人にはまだ負けている」という終わりなき欲望へと変わります。これは“ヘドニック・トレッドミル(快楽のランニングマシン)”と呼ばれ、どれだけ手に入れても幸福度が一定に保たれる心理効果です。

つまり、地位財を追い続ける限り、心はいつも「次のもの」を求めて走り続けるしかありません。そしてそのランニングマシンは、どこまで行っても止まることはないのです。

非地位財に目を向けると人生が変わる

一方、非地位財に目を向けると、人生の見え方が一変します。非地位財は他人と比較しなくても、そこに在るだけで心が満たされるもの。たとえば、朝のんびり淹れるコーヒーの時間や、静かな部屋で読書にふける時間、家族や友人との温かい会話。どれも「いいね!」がつかなくても、確かな幸福感があります。

こうした非地位財の価値は、社会的ステータスや金額では測れません。だからこそ、人によって「満たされる形」が違うし、「これがあれば十分」と心から言える状態が生まれます。

特にFIREやセミリタイア、地方移住を考える人にとって、非地位財は大きな軸になります。多くの人が「給料が下がっても、時間や心の余裕があればそっちを選ぶ」と言うのは、非地位財の方が人生にとって本質的な価値を持っているからです。

私の実体験:地位財を追っていた頃と今

私自身も、かつては完全に地位財を追う生活をしていました。収入が増えるたびに、見栄のための消費が増えていきました。車は中古でもよかったのに「輸入車」であることにこだわり、時計や靴、スマホまで、どこかで「他人よりも少し上でいたい」という思いがありました。

でもその生活は、想像以上にストレスフルでした。ローン返済や維持費に追われる日々。ちょっと気を抜けば、周りに置いていかれる感覚。そして何より、「それらが本当に欲しかったのか?」と自分に問うと、答えはNOでした。

転機は、FIREやミニマリズムの価値観に出会ったこと。そこから生活を見直し、物欲をリセット。今では、散歩と読書と家庭菜園の時間を心から楽しめるようになりました。お金の不安も減り、何より「人と比べない」ことで、心が穏やかになったのを実感しています。

FIREやミニマリズムに通じる考え方

FIRE(経済的自立と早期リタイア)やミニマリズムを目指す人たちが重視するのも、まさにこの非地位財です。働かなくても生きていけるだけの資産を築くことで、自由な時間やストレスのない暮らしを手に入れる。それは「地位」や「名声」ではなく、「心の豊かさ」を求める選択です。

ミニマリズムも同様です。持ち物を減らすことで、本当に大切なものが浮き彫りになる。必要最低限の物しか持たない暮らしは、逆に精神的な満足度を高めてくれます。SNS映えしないかもしれないけれど、自分にとっては心地よい──そんな非地位財の充実こそが、真の幸福につながると感じています。

幸せは「比較」ではなく「自分の基準」で測る

現代社会では、どうしても「他人との比較」がつきまといます。でも本当の意味での幸福とは、「自分がどう感じているか」で決まるものです。

たとえば、月収が20万円でも「家賃が安くて自然が多い町で、静かに暮らせている」と感じる人は、月収100万円でも「他人と比べて焦っている」人より、はるかに満たされているはずです。

大切なのは、「何を持っているか」ではなく、「それに満足しているかどうか」。自分なりの幸せの基準を持ち、それを大切にすることが、非地位財の価値を最大限に活かす方法です。

まとめ:足るを知る者は富む

老子の言葉に「足るを知る者は富む」というものがあります。これは「すでにあるもので満足できる人こそが、真に豊かな人である」という意味です。

地位財に支配される生活は、常に不足感と隣り合わせ。でも非地位財を重視する生き方は、今ここにある「小さな幸せ」を受け取る力を育ててくれます。

FIREを目指す方、ミニマルな生活を志す方、あるいはただ日常に疲れてしまった方にこそ、この考え方を伝えたい。足るを知ることは、諦めではなく選択。手放すことは、失うことではなく、余白をつくること。

「人と比べない人生」──それが、地位財ではなく非地位財を選ぶという生き方なのだと思います。

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